2010年5月18日火曜日

「高学歴ワーキングプアの解消をめざして ~学術の危機と若手研究者・ポスドク問題」に行ってきた。

高学歴ワーキングプアの解消をめざして~学術の危機と若手研究者・ポスドク問題行ってきた。一応その印象を記録しておくことにする。

結論から言うと、ステレオタイプの労働運動と大差ない気がした。国に頼ることばかりを主張し、現実問題として労働市場で価値があると見なされていない人々に対しての批判も反省もない。彼らは主張する。ポスドクは能力があるのだと。それは結構だが、であればなぜ優秀なポスドクは社会に受け入れられないのかをもっと前向きに反省するべきではないか。通常、モノが売れない場合に考えるのはモノが悪いか宣伝が悪いかということである。彼らは優秀なのであろうから前者は問題ないとして、おそらくの問題は後者、つまり社会の側に対してポスドクが有用であることを認識させることができていないことである。とすれば、それをどのように宣伝していくかという議論が盛り上がって然るべきであるのに、全体を通して出てくるのは文句と不幸自慢ばかり(途中で帰ったので最後までかどうかは知らない)。この程度の問題認識もできていない方がいかに自分たちが優秀と叫んだところで、社会の理解は当分得られないだろう。

とはいえ、博士課程を出た人たちのキャリアパスという問題を何とかしなければならないことは事実である。わたしの意見は、上でも少し述べたようにポスドクの能力をもっと社会に広報していくべきというもの。まず、ポスドクのすべてが優秀であるわけではないし、これから少子化が進展していくのであるから、教員一人当りの学生数などの数字を勘案することは必要であるけれども大学教員の数を大幅に増やすという選択はあまり現実的ではない。
そうすると、その受け皿は必然的に民間企業となる。民間企業は結局のところ「儲けてナンボ」の世界であって、手に入れることが利益に結びつくことと分かれば飛びついてくるのは確実だ。議論の中で出てきていたけれども、ポスドクを定期的に雇用している会社では、徐々に採用する人数が増えてきているのだという。これはポスドクが「思ったほど悪くない」ということであり、この循環を拡大させていくことで雇用問題の解決の糸筋となりうる。そのために必要なのは、ポスドクが企業に就職して利益に貢献しているという成功事例を集めて企業や社会に対して広報していくことだろう。

今回のシンポジウム、何となく後ろ向きのトーンになりそうなのはビラの雰囲気で察しは付いていたのだが、それでも参加したのは「NPO法人サイエンス・コミュニケーション!」の理事を務めておられる榎木英介氏が参加されると知ったため。そもそもの発端も前日にtwitterで氏のつぶやきからこのシンポを知ったことによる。この法人は設立趣旨として研究者の意見集約と同時に「科学研究者と市民、あるいは科学研究者同士の科学コミュニケーション」を掲げている点で以前から注目しており、多少前向きな話があるかもとその点に期待して出掛けたのであった。結果は上記のとおりなわけであるが、シンポのトーンは氏の意見とはまた若干異なっていて、空気を読んだと捉えるのが正しかろう。その意味で言うと、ブログでの以下の文言は興味深い。

この問題の解決のためなら、どのような政治的な立場の方々ともお話するつもりだ。
科学政策ニュースクリップ より

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