2010年12月12日日曜日

新サービス導入。kqa! 研究者と事務職員のための、競争的資金FAQ。

 いつもながらの行き当たりばったりなわけだが、新サービスを作ってみた。今度はFAQサイト。



 書いてあるとおり、研究者と事務職員のための競争的資金についてのFAQ。誰でも質問を書き込むことができて、それに対して誰でも回答を付けることができるようなサイトである。

 このようなサイトを以前からずっと作りたいと考えていた。むしろ、実際に作っていた。実は以前に同じようなサイトを運営していたのである。ちっとも人が集まらずに若干黒歴史と言えなくもないのだが、それはともかく。その当時には、今回見つけたような素晴らしく使いやすいサービスなど存在しなかったし、そもそも自分に人を動員するだけのつながりもなかった。
 理由はともかく、その過去サイトはすでに息を引き取っており、その代わりに始めたのがkenq.info*だったりする。そして、こっちのサイトを作ってからはそれなりにアクセスもあるものだから付きっきりになっていた。こんな調子でFAQについてはすっかり遠ざかっていたわけだが、本日たまたまTwitterを眺めていたところで以下のようなツイートがあり、当時の思いが急に蘇ってきた。

RT @shyamamo: #phdjp #f_o_s RT @yayamamo: ライフサイエンスQAを使って広めよう。http://qa.lifesciencedb.jp/ @ 3F19 #bmb2010 http://friendfeed.com/yasunoriyamamoto/171799f0/qa-3f19-bmb2010

 内容としては、ライフサイエンスQA(β)というサイトの紹介である。その内容もさることながら、サイト自体にわたしは衝撃を受けてしまった。以前に作りたいと思っていたFAQほぼそのものだったためである。内容を眺めるよりも前にその提供元を確認すると、OSQAなるもので運営されていることが分かった。そして、さっそくそのサイトにアクセスして、自サイトに組み込めないかを検討。

 ただ、この方針は失敗に終わった。自分のような素人にはすぐに歯が立ちそうなものではなかったのである。導入が簡単でない上に、日本語情報があまりに少ない。けれども、奇しくもOSQAをインストールしようと情報を探していたところで、今回導入したShapadoのサイトへ辿り着いた。どういう関係かは知らないけれども、機能はほぼ同じ。しかも、こっちはインストールなど必要なく、ログインすれば使うことができる。
 そういうことでさっさと寝返って、Shapadoの方へ早速サイトを作成したというわけである。作成、といっても名前とそのビジュアル、それと適当な説明を作った程度であるが。結局、この手のサイトで大事なのは、作った本人がいかに頑張るか、ではなく、いかに頑張ってユーザに使ってもらうかである。たとえば2chは旧態依然とした掲示板に過ぎないけれども、数多くのユーザがいることでサイトとしての価値は他の追随を許さない。掲示板の価値は、その機能ではなく、そこにいるユーザ数による、と言って良いだろう。
 このサイトが今後どうなるかは分からない。以前に感じた問題の解決策を考えついたわけでなく、何となく面白そうなサービスがあったから作ったに過ぎない。しかし、わたしとしては、このような場を作ることが多くの方にとって有益であるという思いは以前のまま変わることはない。少なくとも、その重要性については今後も主張していこうと思う。
 
 最後に、以前に書き散らかしていたFAQサイトの重要性を若干修正しつつ貼り付けておく。

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1. kqa!とは何なのか。
 このサイトは、研究者と事務職員が競争的資金に関して、お互いに質問し、回答を行うことのできるサイトです。いわゆる「教えてgoo」のようなもので、誰かが質問をして、それを誰かが答えてくれるというものと考えていただければ分かりやすいでしょう。日々の事務手続きで分からないことというのは数多いと思います。かといって、常に身の回りに聞けるような知識豊富な人がいつもいるわけではありません。また、別の組織の人や文科省などに電話するのは気が引けてしまうものです。こんなことは誰しも経験があることでしょう。そんなときにこのサイトで質問すれば、誰かが答えてくれるかもしれません。すべての質問と回答は蓄積されて他の方でも閲覧可能ですので、情報が集まれば集まるほど役に立つデータベースとなります。これにより、このサイトは日本全体の競争的資金にかかる手続きを効率化させ、関係各者をハッピーにすることを目的としています

2. 作るに至った背景
2-1. 「引き継ぎ」という問題

 このようなサイトを作るに至った経緯というのは非常に明快です。わたし自身がこのようなサイトを欲しいと思っていたためです。現在の立場は少し違いますが、わたしも以前は大学職員として働いてきました。そこでの最大の問題と感じたのが、業務のノウハウの蓄積がほとんど為されていない、という点でした。当然ながら、働いているとさまざまな分からないことに直面します。それらに対して、わたしは自分なりに考えたり調べたり、もしくは誰かに聞いたりということで何とか解決させてきました。それで一応何とかなるにはなっていたものの、常に頭の中にあったのは、それらのノウハウがどこかに記録され、閲覧できるようにされていれば便利なのではないかということでした。
 なぜなら、事務の仕事というのは毎年やっていることがそれほど変わらず、それに対する質問というのもある程度決まったものばかりであるためです。寄せられる質問の大半は以前の担当者が同じように迷い、解決させてきたはずであるにもかかわらず、それをまた最初から調べるというのは労力の無駄でしかありません。しかし、現実としては以前のやり取りがどこにも記録されていないので、分からないことが出てくるたびにひとつひとつ地道に調べなければなりません。担当者が入れ替わる際には、いわゆる「引き継ぎ資料」という形で何らかの業務内容の伝達が各研究機関で行われていることと思います。ですが、それがまともな形で行われたという例を聞くことはほとんどありません。単なるA4 用紙1枚だけということもよく聞く話です。わたし自身の経験としてもA4用紙1枚ということはなかったものの、「どういう仕事をするか」という内容ばかりで、上記で述べたノウハウの部分、すなわち業務を行う上で生じてくるであろう疑問とその答え、または、よく寄せられる質問とその回答などという部分についてはほとんど触れられていませんでした。これは非常に勿体ないことで、その人の2年なり3年なりの職務上での経験を埋もれさせてしまうことに他なりません。

2-2.「質問」のもたらす弊害
 これは、その担当者一人が苦労するという問題だけにとどまりません。というのも、解決できない問題が発生すれば、それを他の誰かに聞かざるを得ないためです。そして、その質問が業務フローの上位の人に大きな負担をかけることになります。たとえば部局の人であれば事務局の人へ、事務局の人であれば文科省などの人へ聞くことになるでしょう。ここで重要なのは、双方の負荷が異なる点です。質問する側は一度で解決するので負担はそれほど大きくありませんが、質問される側は通常複数の部局もしくは機関を相手としているために、何度も何度も同じことを回答しなくてはなりません。つまり、各担当者の問題がそれ以外の者にまで影響を及ぼすということになるわけです。この負担は一度体験してみないと理解できないかもしれません。中央の役所に勤めている知り合いに聞く限り、応募や書類提出のシーズンになると日中は電話対応ばかりに追われてほとんど何もできないというレベルであると聞いています。
 もっとも、この件については送り手が受け手に対して分かりやすい情報伝達を行うことができれば何の問題もありません。けれども、それは現実的には非常に難しいことと言わざるを得ません。というのも相手の組織の規模や担当者の理解の程度はそれぞれであって、それによって最適な内容というのは変わってくるためで、すべての人たちに分かりやすく情報伝達を行うというのは至難の業です。

2-3. サービスの質という問題
 さらに、これは事務職員の間での手間が増える、というだけの問題でもありません。ノウハウの蓄積が為されていないという問題は、結果として事務のサービス低下につながります。たとえば研究者やその他外部などからの質問があったときに、その回答が分からなければ調べるなり、誰かに聞くなりしなければなりません。それで回答を得ることができたならば最低限のサービスは果たしていると言えるのでしょうが、それで十分ではありません。質問する側は当然何かに困っているから質問をするわけで、その回答がすぐにもらえないというのはその人にとってストレスであり、質の低いサービスと取られても仕方ありません。
 事務作業はそれ自体のために存在しているわけではなくて、あくまでお客さんである研究者へのサービスとして存在しています。こういった視点はこれまでなかったであろうものですが、これからはもっとも意識しなければならない問題となると思われます。ノウハウが蓄積されてないという問題は、この観点から見ても大きな影を落としているのです。

3.問題解決へのアプローチ
 これまで見てきたように、ノウハウが蓄積されていないという現実が、実に多くの問題を引き起こしています。繰り返しになりますが、それが存在しないことにより次の担当者は最初から調べ直す必要がある。そして、業務フロー上で上位の者は、その分からない担当者に対する対応に追われることになる。さらに、それらのやり取りの間、質問する側である研究者は回答を待たされることになる。

 さて、それではこの問題を解決するにはどうすれば良いのでしょうか。単純な話でして、蓄積されていないのであれば蓄積すれば良いということになります。それを達成するための方法論は多々あるかと思いますが、その中でわたしがもっともふさわしいと感じたのが「教えて!goo」のような、いわゆるナレッジコミュニティサイトでした。

4. ナレッジコミュニティとは
 ナレッジコミュニティとは、「会員同士が、お互いの質問に答え、疑問を解決するウェブサイトのこと」(wikipediaより)を指します。 Q&Aサイト、質問サイトとも呼ばれ、有名どころでは先ほど挙げた「教えて!goo」や「Yahoo!知恵袋」などがあります。ご存じの方も多いでしょうが、簡単に言うと質問を書き込むと他の誰かがそれに対する回答を書き込んでくれるというサイトです。
 わたしがこれらのサイトに着目するのは、この仕組みが今まで挙げてきた問題を解決できる可能性を持つと考えるためです。問題点の箇所で挙げた各立場ごとに見ていきましょう。

業務の担当者
・質問しやすい

ナレッジコミュニティにおいては現状と比較して、圧倒的に質問がしやすくなります。というのも、質問の対象を限定しないためです。たとえば電話をかけたり、メールを送ったり、という行為は特定の誰かに回答を求めるということになり、相手への遠慮から質問を控えさせる原因ともなります。しかし、ナレッジコミュニティでは回答の役割をそういった一部の人に限定はしません。これにより、疑問を持った人は相手に気兼ねすることなく質問することが可能となります。質問するという行為にしても、その質問を書き込んで待つだけで、メールで問い合わせをする労力とほぼ同じであり、特別な負担を強いるものではありません。

・ノウハウの蓄積
 次に、疑問や問い合わせとそれに対する回答を自動的に保存できるという点が挙げられます。質問から回答への流れをサイト上で行うことによって、そのやり取りは記録されて半永久的に閲覧できるようになります。こうすることにより、各担当者の疑問とその回答を蓄積させていくことが可能となります。
 かつ、重要であるのは別の人のやり取りも相互に閲覧できる点です。すべての研究機関のあらゆる業務を行う人たちが同じ場所にデータを蓄積させていくことにより、事務についての一大データベースを作ることができます。これにより、たとえば同じ業務を別の機関でやっている人がどういった運用をしているかといったようなことを知ることができます。また、自分自身が担当していない事務についても何かしら疑問を持ったときにすぐに調べることができるようになります。

 いくらかの分野の事務については各機関によって扱い方が異なり、そのまま役に立たないということはあり得るでしょう。しかし、それはこのサイトの価値を失わせるものではありません。たとえそのまま役に立つことはなくとも、他の機関が何をやっているかという情報は自機関が何かを行う際の参考情報として活用することが可能であるためです。

業務フロー上位の者
・回答の負担軽減

 ナレッジコミュニティ導入でもっとも恩恵を受けるのはこの立場の方かもしれません。現状としては、受け手に対して何らかの疑問を持たせるような情報伝達を行ってしまうと、業務に支障をきたすほどの電話責め、メール責めに遭ってしまいますが、その苦労から解放されることになります。方法は簡単で、寄せられる疑問に対して、このサイト上でその回答を示せば良いのです。これによって最初の応対が情報として残るため、他の同じ疑問を持った人はそれを見て自己解決できるようになり、何度も同じ質問に対して回答するというような無駄な作業が軽減されます。事実、ナレッジコミュニティ最大手のOKwaveは、同サイトが活用されるにつれて、問い合わせの件数は減少するというデータも提示しています。

 あくまで軽減でしかないのはすべての人がこのサイトを見てから問い合わせるわけではないため、もしくは探しても見つけられないためですが、ある程度情報が蓄積されてくればおのずと何か物事を調べる手段の一つとして組み込まれていくはずと思われます。というのも、問い合わせる側も大多数の人は何かしら事前に調べて、それでも分からない場合に初めて誰かに聞くという行為に至るためです。現状の有様ではGoogleやYahoo!など大手の検索エンジンに引っかかるということはほとんどありませんが、情報が充実してくればそれらの検索エンジンに調べたい内容を入力して、ここに行き着くということも当然生まれてくるでしょう。

研究者
・問い合わせでの手間の減少

 他方、問い合わせる側にとってもナレッジコミュニティは大きなメリットを提供します。まず、事務の担当者の知識が蓄積されることによって、質問に対して「分からない」と言われたり、回答に時間がかかったり、ということから解放されます。また、このサイトはWeb上にあるため、当然事務職員以外の人、たとえば他の研究者も見ることができます。そして、それによって事務職員からの回答を待つこともなく解決する、ということも考えられるでしょう。問い合わせの電話というのは正直面倒なものですが、問い合わせる側も好きで電話をしているわけではありません。あくまで何か分からないために電話をしているのであって、電話をしないことに越したことはないのです。このサイトは、そのお互いにとって好ましくないやり取りをそもそもなくしてしまうという可能性も秘めているのです。

5.「kqa!」という試み
 これまで色々と述べてきましたが、このような数多くの可能性を持つナレッジコミュニティを、大学事務の中で取り入れたいという強い思いをとりあえずの形にしたのが、わたしの作ったこの「kqa!」です。これを活用していただくことにより、これまで述べてきたような様々な効果を生み出すことができるでしょう。

 100年に1度と言われる昨今の不況の中、高等教育への予算が増えるということはあまり期待することができません。現状でも法人化、そしてその際に始まった運営費交付金の削減などによって、それ以前のやり方を続けていくことはできなくなっています。こういった世間の風に対し、国は教育や研究をないがしろにしている!という批判があります。この指摘は間違いではないのでしょうが、わたしとしてはそれもある程度やむなしと考えています。

 なぜなら、これまで指摘してきたように、大学組織にはまだまだ多くの無駄があると思われるためです。これはわたしが大学に在籍していた頃はもちろん、現在の立場としてもその感覚はまったく変わりません。厳しいという現状はそう簡単に変わるとは思えませんが、これらの多くの無駄を省くことによって生産性を高めていくということは十分可能でしょう。そして、それによって生まれた余裕でもって、多少楽をすることもできるでしょうし、新たな何かを立ち上げるという活力も生まれてくるでしょう。このサイトがその助けになるのであれば、それに勝る喜びはありません。
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以上。

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