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2010年12月10日金曜日

次期e-Radがどうあるべきかを妄想してみる。 第二回。API公開のすすめ。

e-Radについて妄想してみる第二回。第一回はこちら。

今回も扱うネタはデータ連携なのだが、もう少し具体的に考えてみる。
まず、前回の内容を簡単に振り返ってみる。議論の発端となった「予算監視・効率化チーム」中間報告に次期システムの目的として掲げられていたのは以下の2点。

・研究者の業績や略歴を審査に活用
・他のデータベースと連携して相互に利用できる仕組みを作る

これらの目的を果たすためにどうあるべきかを考えて、どのデータをどのシステムで持つべきかを以下のようにまとめた。

① 所属情報(所属機関、役職、氏名、ふりがななど)
  → e-Rad
② 業績情報(論文、著書、知的財産権、講演など)
  → ReaD, Research map → e-Rad
③ 経歴情報(過去の所属機関、役職など)
  → ReaD, Research map → e-Rad
④ その他情報(研究キーワード、コミュニティ、住所、HPなど)
  → ReaD, Research map

つまり、e-Radが現在の所属情報だけでなく、業績情報、経歴情報なども持つような形となっている。これは、どの情報が競争的資金の審査にとって必要か(必要でないか)という観点から切り分けを行っている。不可欠な情報は申請・審査用のシステムで保有し、それ以外の部分はそれ以外のシステムが保有する。上記の①から③までは前者に該当し、④のみが後者に該当する。


さて、ここからが今日の妄想。

・データ参照をしないのはなぜか
 わたしの案の場合、業績情報、経歴情報といった、これまでReaDなどが持っていた情報をe-Radが持つことになる。参照するのではなくてe-Rad自体で管理するように提案するのは、わざわざシステム上のウイークボイントを増やす必要はないと考えるためである。申請や審査に不可欠な情報を他システムから参照するということは、安定稼働のためのハードルを上げることでしかない。その情報が不可欠なのであればあるほど、別のシステムとの参照するようなことは止めるべきである。

 「参照をしない」ということは、「連携をしない」ということとイコールではない。申請と審査に必要な情報はe-Radで管理した上でAPIの公開という形で他システムと連携することがもっとも望ましいとわたしは考える。このAPIの公開の一環として、ReaDやResearch mapなどといった国のシステムとの連携も行われるべきである。

・APIの公開
 「APIの公開」というアイディアは今年6月の熟議カケアイ「我が国の研究費を使いにくくしている問題点は何か?」の議論の中でも指摘されている。以下、takechan2000さんの発言を引用。

研究費申請報告を楽にするという目的にはまったく異論はないのですが、その手段としてここに挙げられたようなDBを統合すればいいという結論は短絡的だと思いました。
研究業績は研究者みなさんいろいろなシステム、サービスを使っていると思います。たとえば手元ではEndNoteやRefWorksを使っている人も多いでしょう。公開側も大学の業績DBであったり、個人のWebページでいろいろ工夫している人も思います。このような多様な環境下ということを考慮せずに、このサービスを使いえばよいあるいは使いなさいというのは結局は研究者に新しい雑務を生じさせるだけだと思います。
最初の目的に関してシステムがどうあるべきはもっと視野を広げてきちんと調査して提案していくべきだと思いました。私からみると、当初の目的はユーザ認証の連携とデータAPIの公開で、かなりのレベルまで解決できるのではないかと思います。

我が国の研究費を使いにくくしている問題点は何か?|熟議カケアイ - 文科省 政策創造エンジン

 APIとは、ざっくり言えば「あるシステムが別のシステムのデータを利用するための約束事」のこと。Twitterを例とすると、Twitterを公式サイトでのみ利用している人は少数派ではないだろうか。公式以外にもさまざまなサイト、アプリが存在しており、人それぞれに自分の気に入ったものを用いてTwitterを楽しむことができる。用いるサイト・アプリは異なっていても、そこに問題は生じない。たとえば公式以外のサイトから書き込みを行ったとしても、その内容は公式サイトに即座に反映され、また別のアプリから見たとしても同じようにその情報を見ることができる。こういったことが可能になっているのは、TwitetrがAPI、つまりTwitter上のデータを利用するための約束事を公開し、その約束に基づいてそれぞれのサイト・アプリが作られているためである。

 メリットとして挙げられるのは以下のようなもの。「WEB制作者」は「APIを利用してサービスを作る人」を指し、「API提供会社」とは「APIを提供する人」、つまりここでは「文科省」ということになる。(太字化は引用者)

WEB制作者にとっては、
他社の膨大なデータベースや機能を、無料で利用できるため、Webサイトの開発コストを大幅に削減でき、かつ効率的に制作することができるというメリットがあります。
このため、個人や小資本の会社でも、人気のWEBサイトを低コストで効率的に作れる可能性もあります。
最近では、APIを使ったWEB制作や、複数のAPIを組み合わせた「マッシュアップ」、APIを使って無料のWEBサービスの収益化を図る「マネタイズ」などが、トピックになっています。

API提供会社にとっては、
自社のみでは考え付かないようなWEBサービスや、自社のみでは実現できないようなWEBサービスを、外部の誰かが作ってくれるため、API利用サイトから自社サイトへユーザーが流入が期待できるようです。
また、自社のデータベースや機能を、間接的にせよ、自社サイトを利用してくれるユーザーが増え、それがデファクトスタンダードに繋がるかもしれないので、結果として、データを集積するスピードが速まり、競争優位に立つことを期待できるようです。

APIとは? | プログラミング実習室

 わたしは次期e-RadがAPIの公開を行うことを提案する。このAPIの公開は上記の説明からも分かるとおり、システムの利便性の向上、保有する研究者情報の活用などに革命的な効果を及ぼす可能性と考えるためである(なお、国の機関によるAPIの公開の例はすでにあって、J-GLOBALが行っている → WebAPI提供について J-GLOBAL)。API公開により、誰でも簡単にe-Rad上で管理する情報を元にしたサービスを作ることができるようになる。Twitterの例で言えば、公式が提供するサービスよりも使いやすいものが生まれているし、単に閲覧・投稿を行うものだけでなくて、たくさんの人が「お気に入り(favorite)」登録を行ったつぶやきを見ることのできる「ふぁぼったー」、つぶやきをテーマごとに整理して、まとめて見ることができる「togetter」など、Twitter内での情報を利用しつつもまったく独自のサービスも生まれている。

その他のサービスはこちらを参照のこと。→ 「Twitter関連Webサービス - TwitterまとめWiki」

 同じように、APIの公開を行うことからシステム上でのデータを活用して、役人の発想では考えつかなかったような便利なサービスが提供されるようになる可能性がある。さまざまなサービスが生まれるということはユーザであるところの研究者や大学事務職員などの関係者にとってはシステムの利便性向上につながるだろうし、直接利用はしない一般国民にとっても国費で助成された研究費に基づく研究に関する情報にアクセスする機会が増えることにつながる。これは成果の社会還元、産学連携の振興にも大いに役立つことになるだろう。

 言うまでもないが、公開の対象となるのは公開して良い情報に限られる。何を公開し、何を公開しないという議論は十分に行う必要があろう。とはいえ、公的研究費の採択課題情報やその分野、金額、その実績報告、成果といったものは基本的に公開を義務付けても良いのではないか。
 提供する情報によって提供できるサービスは異なってくるが、このようなサービスがあると面白いのではないかという妄想をいくつか。不謹慎と言われそうなものもあるが、とりあえず。

・事業の公募が開始されたらメールが飛んでくるサービス
・あらかじめ設定しておいたキーワード(人名、分野、専門用語など)を含む業績情報が登録されたらメールが飛んでくるサービス
・被アクセスの多い研究者や業績のランキング
・研究者ごとの研究費獲得額ランキング
・助成金の総額とそれに基づいて投稿された雑誌のインパクトファクターの合計数によって、助成事業の「生産性」を測ることのできるサービス


・大学独自のシステムと連携すべきか
 最後に、takechan2000さんの指摘されている「大学の業績DB」について触れておく。近年、一部の大学では大学内の研究者の分野や業績情報を検索できるシステムを公開している。おそらく共同研究や産学連携に役立てるためなのだろう。いわばReaDの大学限定版とも言うべきものだが、大学内部のシステムであるだけに大学内での強制力は本家よりも強い。結果、こちらの情報の方が充実していて、大学関係者にとってはReaDよりもこちらのシステムとの連携(片方に入力すればもう片方にも反映されるように)してほしいという要望もあるようである。
 しかし、わたしはその必要はないと考える。これは共同研究などを求める方が必要とするのは大学単位の検索システムなのか、全国の研究機関を対象としたものなのかを考えれば明白であろう。大学をわざわざ限定した上で研究相手を探すわけではなく、あくまで探すとすれば研究分野や業績によるはずである。日本全体で使い勝手の良いシステムがひとつできることが利用者にとって最善であるとすれば、それを実現させるためにリソースを集中させるべきであろう。現在の大学単位でのシステムはその意味を失っていくことになるだろうし、それが本来あるべき姿であるかと思う。

 そもそも連携しようにも、日本全国でさまざまな業者によって作られたであろう大学の業績管理システムそれぞれのデータ形式がすべて同じであるわけはなく、それゆえに何の改修もなしに次期e-Radとデータ連携が行えるわけではない。この状態を解決しようとすれば、それぞれのシステムでひとつの形式に対応できるようにするための大規模な改修が必要となる。しかし、先述のとおり、その意味を失うことになるであろうシステムにそれほどの投資を行う価値はないと思われる。

 とはいえ、大学独自システムに登録した情報をすべてイチから入力しろと言うわけではない。既存システムにすでに登録されている情報はCSVファイルなどで取り出し、次期e-Radの業績情報取り込み形式に加工した上で取り込みを行えば良い。このやり方であればシステムの改修は発生しない。CSVファイル内の列を入れ替える程度なのだから、普通の事務職員でも十分作業可能であるはずである。

 大学独自の業績ページは不要ではないかと書いたが、やはり大学独自で検索ページを持ちたい、大学独自の機能、データ項目を追加したいというニーズがまったくないわけではないだろう。これについては、公開APIを利用して自身の大学の情報のみを検索できるようにすれば簡単に実装可能である。当然既存システムからの改修費用は生じるが、開発費、維持費はイチから作るよりも大幅に抑えられるだろう。


 今回の妄想はこの程度で。次は保有する情報の活用について、もう少し掘り下げたい。

2010年12月8日水曜日

今こそ研究支援の仕組みを抜本的に考え直すときではないかな。

 政策コンテストの結果が発表され、その結果に対してあれこれと賑やかである。研究関係の話題としては学振PDがどのように処遇されるかについて盛り上がっている。しかし、これに限らず全体的に、当初文科省が希望していたほどの予算が確保できる見込みはなさそうで、大学その他研究機関にとって来年度はいっそうに厳しい財政状況となるだろう。ただし、この事態に悲観してはならない。既存の制度を変えようとするには、これ以上ない機会とも言える。わたしは大学事務職員として、どうあるべきかについて考えてみたい。

 現在、日本にはさまざまな事業の元でさまざまな研究が行われ、少なからぬ成果を挙げていることだろう。しかし、大きな予算を費やして研究者を雇用し、大規模な研究を行えば成果が出るというのはある意味当然のことである。問われなければならないのは成果の有無ではなく、それぞれ掲げた目的を果たすためにその事業の仕組み、従事する研究者やその組織が十分に機能しているのか、改善すべき点はないのかということであろう。
 なぜならば、予算的な制約から無尽蔵に事業を広げることはできないためである。科学技術関係予算の総枠を広げることができない以上、その枠の中で多くの成果を残すための努力が行われなければならない。その場合、どこにどれだけの予算を配分するべきかといった通常の審査の問題と同時に、当然に助成を行う制度がどのようにあるべきかという点も問われなければならない。そもそもの構想が不適切であれば、どのような審査を行ったところで、どのような優秀な研究者・組織があったところでその能力を十分に発揮することはできないためである。

 にもかかわらず、事業全体に対する見直しはこれまでほとんど行われてこなかったといって過言ではない。現在の競争的資金の乱立がその確たる証拠である(参考:平成22年度競争的資金制度一覧)。国全体としてどのように日本の研究を活性していくのかという構想があり、それを実施しようとするのならば、常に既存の制度とその構想を照らし合わせ、必要な事業は拡充する一方で相対的に不要となった事業は整理・統合を行うというようなことが自主的に行われて然るべきである。けれども、そのようなことが行われた例をわたしは聞いたことがない。むしろ、外部からの批判を受けてもなお聞く耳を持たず、予算削減されてようやく重い腰を上げるといった体たらくである。
 それぞれの事業にはそれぞれの思惑があるに違いない。そして、それがまったくの的外れというわけでもないだろう。ただし、第一に考えられなければならないのは、それが成果を挙げるために十分なものとして現場に受け入れられているかということだ。政策立案者の思惑はひとまず置いておいて、それを実際に行う研究者、関連の事務手続きを行う事務職員にとって、その事業が使いにくいものであった場合、どれだけの金額を費やしたところで成果が生まれることは期待できない。成果を生むにしても、多くの無駄が生じてしまう。具体的な例として挙げられるのは、数多くの競争的資金ごとに異なる執行ルールである。事業ごとにルールは異なり、合算して使うこともできず、それぞれに報告書を提出する必要がある。このような状態であるから、競争的資金を獲得すればするほどに研究を行う時間がなくなるという事態を招いている。

 このような状態で、さらに予算をよこせというのは正直おこがましいというのがわたしとしての率直な感想である。むしろ、減らそうとする側の論理の方がもっともらしく聞こえてしまうほどである。以下は財務省 主税局 税制第三課長/前財務省主計局主計官 (文部科学担当)(当時)の藤城 眞さんの発言。

日本の財政状況が非常に厳しいことは言うまでもありません。今、教育に限らず、さまざまな分野で、予算を増やしてほしいという声があるわけです。教育に関して時々感じるのですが、よい施策であればお金がついてくるのが当然だといった感じで話される方もいます。しかし、予算制約のなかで、いくらよい施策であっても、申し訳ないが今はできないというものもあります。そもそも提案自体が適切かどうか、その吟味から始めなければならないものもいろいろとあります。こうしたなかで、一体、どういう予算を認め、どういう予算を減らして、他の予算にその資源を回すのかという議論も必要なのです。

RIETI - 第7回「真の教育、研究水準の向上につながる大学改革とは」

 「罪を犯したことがない者から 石を投げよ」というわけではないが、予算の拡充は現在抱えている事業の乱立や執行ルールの複雑化といったような無駄を多少は改善させた後に言うのが筋というものだろう。これは必要な予算を減らすことができるだけでなく、複雑な事務手続きを軽減させるという点で研究者が研究を行う時間を増やすことができる点にも注意すべきである。

 そもそもの話、事業仕分けなどにおいて批判されているのは「研究支援のための仕組み」であって「研究それ自体」であることを忘れてはならない。研究それ自体が日本の将来にとって必要であるということについて、どの程度かという点にばらつきはあるにしても一定の理解は得られている。しかし、研究が大事であることと、今現在行われている研究支援のための各種制度が大事であることは必ずしもイコールではない。いかにその助成の対象が大事なものであろうとも、それを支援する仕組みが不適切であれば国民の理解を得ることはできないし、今後の発展を見込むことはできない。


 であれば、適切な研究支援の仕組みとは何だろうということに当然なるのだが、この答えはまだ自分の中でもはっきりしていない。その仕組みを生み出していくための手段としておぼろげながら現在考えているのは、研究機関や研究者が助成事業を評価するという取り組みである。たとえば、事業構想の妥当性、研究費の使いやすさ等々で評価を行い、その結果が芳しくないものについては予算化を見送ることとする。絶対に配分機関側はやりたがらないだろうなー(笑)とは思いつつも、配分機関と研究機関との間の相互の緊張関係なしに良い事業は生まれないし、良い成果も生まれない。研究機関側が駄目なものは駄目と公然と文句が言えるようになれば良いのだが、最近の学長・総長レベルの声明を聞いても事業批判、文科省批判までに及ばないところを見ると、多少の遠慮が見られるように思う。ということであれば、何らかの形で研究機関側が事業について意見することのできる仕組みを作ることは意味のあることだろう。
 また、アメリカにおけるFDPのような組織を作ることはできないかと考えている。FDPとは「Federal Demonstration Partnership」の略で、「配分機関と大学が協力して、競争的資金制度の改善策を研究し、議論し、実験・実証する場」(「米国の競争的資金の柔軟な会計制度とそれを実現してきた米国の仕組み」より引用)である。この組織の活動の中で、さまざまな事務手続きが合理化され、競争的資金における高い効率性と透明性が実現されたとされている。これまた配分機関が嫌がりそうな話であるが、こうした枠組みを設けることによって恒常的に事業制度の改善と全体の効率化を望むことができる。

 その他、さまざまな方法が考えられるのであろうが、いずれにせよこれまでの仕組みを十分に検証し、現状の問題点とその改善策を探ることが不可欠で、その上で今後どのような体制としていくべきか、そしてどのようにそれを構築していくかを考える時期に来ていることは間違いない。関係者の一人として、これからも何かのお役に立てるよう頭をひねろうと思う次第である。

 なお、この一環で次期e-Radについて妄想してます。 →「kenq.info blog: 次期e-Radがどうあるべきかを妄想してみる。」)

2010年11月10日水曜日

次期e-Radがどうあるべきかを妄想してみる。

久々にまともな記事更新だなということはさておき。先日まで行われていた熟議カケアイにて、研究費を使い易くするためにどうすれば良いかということがテーマとなり、その中のひとつの策としてe-Radの充実が挙げられていた。そして、わたしはそこに乗じて随分と好き勝手に理想論をぶちまけていたところである。詳細は以下のリンクをご参照のこと。

研究費を使い易くするための方策を、一層具体化するために(熟議カケアイ)

わたしがシステムの充実を重要と捉えるのは自分自身が過去に携わっていてそれなりに分かるということもあるけれども、それがすべての研究者にとって避けられないプロセスであるため。その部分を効率化することは、すべての研究者にとって利益のあることとなる。また、簡単便利なシステムとなれば研究者がシステムと格闘する時間が削減され、相対的に研究者へ研究するための時間を提供することになる。研究費の総額を増やすことが難しい現状の中、研究時間の提供は研究成果の向上のために打つことのできる数少ない手である。このように、影響範囲が広く日本全体の研究環境の底上げにつながるのがシステムの改善と考えるのである。


わたしの考えはさておき、上記の熟議の元ネタである「予算監視・効率化チーム」中間報告(熟議HPのPDFへリンク)には次期e-Radという文言が見える。曰く、「府省共通研究開発管理システム(e-Rad)の機能を強化することで、研究費などの業務を省力化する」。具体的なアイディアとして挙げられているのは研究者の業績や略歴を審査に活用できるようにすることと、他のデータベースと連携して相互に利用できる仕組みを作ること。この元ネタはおそらく今年3月に行われた科学・技術ミーティングin大阪での宮川剛氏のプレゼン資料「これからの科学・技術研究についての提言」なのだろう※。中間報告にはこのアイディアに限らず、この提言をベースとした提案が数多い。

※ この「提言」自体は昨年2月に発表され、ニュースとしても取り上げられたものであるが、実際に文科省の資料に取り上げられるほどのインパクトを持つようになったのは宮川氏のプレゼンによるところが大きいと考え、このような記述とさせていただいた。現物は以下URLからダウンロード可能。

http://ibr.neuroinf.jp/modules/xoonips/detail.php?item_id=25802

これらの提案にまったく異論はない。それぞれ実現することができれば、研究者に限らず研究に携わるすべての方にとって利益のあることだろう。ただ、極めて大きな問題は、どのようにそれを実現するかである。かなり目立つ場所にアイディアとして出てきた以上、これらの機能は次期e-Radに実装されることは間違いないだろう。しかし、システム上で「できる」ということが「使い易い」とは限らず、それゆえに「効率的になる」とも限らない。「どのように」できるか、という部分が決定的に重要になってくるのである。

そういうわけでタイトルのとおり、次期e-Radがどうあるべきかということについて妄想してみたい。自分に相応の能力と肩書きがあるのならば「提案」とでも言えるのだろうが、そうでない以上わたしができるのは「妄想」することくらいである。「ドラえもんのうた」でも口ずさみながら、眺めていただければ幸いである。


さて、検討すべき課題は以下の二つ。

・研究者の業績や略歴を審査に活用
・他のデータベースと連携して相互に利用できる仕組みを作る

挙げられている課題は二つだが、実質は後者が前者を包含するので一つと言っても良い。すなわち、各システムの連携という大きな課題があり、その具体的な連携の一つが業績情報などの審査への活用である。今回はこの具体的に挙げられている例について、どうするべきかを考えたい。

どうすべきかを考える前に現状の問題点を確認しておく。問題は端的に言えば、現在の申請の仕組みでは複数のシステムでのデータ連携ができず、それによって利用者に不便を強いていることである。略歴や業績を登録させようというデータベース(ReaD等)があるにもかかわらず、その情報はそのシステム内でのみ活用されてそれ以外の価値を持たない。そして、研究者はその手の情報を応募を行うたびにそれぞれのフォーマットで登録させられてしまう。これは研究者にとって大きな手間であり、さらにデータベースに情報を登録するインセンティブを削いでいる。そして、その結果としてデータベースの価値を低めることにもなるという調子で、何も良い結果を生み出していない。

こういった問題に対して提案されているのが、各システムを連携させて共通で利用できる情報は共用するような仕組みの構築である。情報が共有されることにより、研究者にとっては一度登録してしまえば複数のシステムで同じ情報を入れる必要がなくなる。審査に用いられるということであれば、また、そこに情報を登録することにより今後の応募でその情報を活用することができるというインセンティブがあれば、データベースは当事者の意識に任せている現状よりも確実に充実する。データベースが充実すれば、本来の目的である「産学官連携、研究成果の活用、および研究開発の促進」も進展することが期待できる。

こういったことを実現させるためにはどのように連携が行われるべきか。どのようなシステム構成とするべきか。以下、ポイントを絞って簡潔に検討してみることとする。

・検討の対象とすべき情報は何か
現状のReaDとResearch mapを見たところ、研究者に紐付く情報としてはおおまかに分類して以下のようなものがある。これらを検討の対象とする。

① 所属情報(所属機関、役職、氏名、ふりがななど)
② 業績情報(論文、著書、知的財産権、講演など)
③ 経歴情報(過去の所属機関、役職など)
④ その他情報(研究キーワード、コミュニティ、住所、HPなど)


・現状、これらの情報を持つのはどのシステムか
現状の役割分担はどうなっているか。おおよそのところ以下のとおり。

① 所属情報(所属機関、役職、氏名、ふりがななど)
  → e-Rad
② 業績情報(論文、著書、知的財産権、講演など)
  → ReaD, Research map
③ 経歴情報(過去の所属機関、役職など)
  → ReaD, Research map
④ その他情報(研究キーワード、コミュニティ、住所、HPなど)
  → ReaD, Research map


・どのシステムが情報を持つべきか
どのシステムが情報を持つべきか。この点については、どの情報が競争的資金の審査にとって必要か(必要でないか)という観点から切り分けを行ってはいかがかと思う。すなわち、不可欠な情報は申請・審査用のシステムで保有し、それ以外の部分はそれ以外のシステムが保有する。上記の①から③までは前者に該当し、④のみが後者に該当する。

① 所属情報(所属機関、役職、氏名、ふりがななど)
  → e-Rad
② 業績情報(論文、著書、知的財産権、講演など)
  → ReaD, Research map → e-Rad
③ 経歴情報(過去の所属機関、役職など)
  → ReaD, Research map → e-Rad
④ その他情報(研究キーワード、コミュニティ、住所、HPなど)
  → ReaD, Research map

④に該当する情報は直接審査にとって必要ではなく、①から③とは区別されるべきである。また、Reseach mapにおけるキーワードやコミュニティのように、これらの情報は各システムのいわばウリとなる部分であり、汎用的な情報として扱われるべきものではない。各システムは①から③を研究者の基礎情報として取り込んだ上で、それ以上についてはそれぞれの思想で保有すれば良いのではないか。


・連携は具体的にどのように行われるべきか
前項に挙げたような体制となれば連携すべき情報はすでに同じシステム内に持っているので、申請・審査時のシステム間でのデータ連携は発生しない。次に、それらの情報をどのように参照・登録させるかについて考えてみる。

① 所属情報(所属機関、役職、氏名、ふりがななど)
② 業績情報(論文、著書、知的財産権、講演など)
③ 経歴情報(過去の所属機関、役職など)

①と③については研究機関の事務職員が管理すれば良いので、そもそも応募時に研究者自身による登録の作業は不要である。①は現状のe-Radでも事務職員が管理する情報である。③は導入時に本人による確認が必要となるが、一度正しく登録されてしまえばその後は①の情報を追加していけば良いのでやはり本人が登録する必要はない。

②については本人があらかじめ登録しなくてはならない。また、応募時にはその内容に関連する業績を選択するという作業が発生する。ただし、同システム内にこれらの情報が存在すれば、この作業は全体の業績リストから必要なものにチェックを入れるといったような程度で済む作業である。
業績の登録、編集についてはちょっとした作り込みが必要と思われる。審査の公平性という観点から考えれば、応募時以降の情報は業績として表示されるべきではなく、業績として登録した情報はそれ以後に編集されるべきではない。これは何らかの応募時に業績として登録を行った情報については編集不可とすれば良いだろう。


かなり大雑把ではあるが、望ましい次期e-Radの体制から具体的な登録方法まで妄想してみた。「使い易い」かどうかという部分についてはユーザインタフェースの要素が大きいと思われるので何とも言えないが、「効率性」という部分では大きく改善されるのではないかと思う。かつ、想像する限り、審査の公平性・公正性も現状並に維持することができ、データベースの充実を期待することもできる。とはいえ、これはあくまでわたし個人の妄想に過ぎない。もっと良いアイディアは多々存在するだろう。ご意見ご質問がありましたらコメントいただけると幸いである。